7人の名探偵

十角館の殺人」から30年。新本格ミステリ30周年企画として講談社から記念アンソロジーが出ている。

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私はしばらくミステリからは遠ざかっており、このような企画は関知するところではなかったが、たまたま家族旅行で電車に乗った時に、扉に張ってあった広告を見、麻耶雄嵩山口雅也我孫子武丸有栖川有栖、法月倫太郎、歌野晶午綾辻行人の豪華アンソロジー「7人の名探偵」が出ていることを知り、その日の夜、早速本屋に駆け込み入手した次第。

 

新本格を支えてきた7人の作家によるアンソロジーはメルカトル鮎、火村英生、法月倫太郎といったお馴染みの探偵ものに加え、山口雅也の落語風ミステリ、我孫子武丸歌野晶午のSF風ミステリ、綾辻行人のエッセイ風ミステリと非常にバラエティーに富んだものとなっている。

いずれも面白く、甲乙つけがたいが、個人的には我孫子武丸綾辻行人の作品が印象に残る。

 

我孫子武丸「プロジェクト:シャーロック」

IBM人工知能ワトソンは創立者のトーマス・J・ワトソンから名付けられたものでシャーロックホームズの相棒とは関係がないのだが、ここでは大量犯罪データによる教育で犯罪捜査に関する知能が向上し、事件解決していくというオープンソース人工知能シャーロックが登場する。このような探偵に盲点はあるのか・・・?といった内容で、個人的には見事なオチだと思った。

 

綾辻行人「仮題:ぬえの密室」

新本格の作家たちは京都大学推理小説研究会出身の人が多い(綾辻我孫子、法月、麻耶)のだが、彼らが大学在籍していた頃に聞いた幻の「犯人当て」を巡るミステリ?である。綾辻の奥さん(「十二国記シリーズ」「屍鬼」の小野不由美)等も登場し、完全にファンのための作品であり、内輪ネタに近いものがあり、非常に興味深く読めました。ちなみに私はこれを読むまで小野不由美綾辻行人の奥さんであることは知りませんでした。(恥)

 

しばらくミステリから遠ざかっていた私としては、また読みたくなってくるわけで困る次第。